北の三都と名湯そして美味の旅 富田 治夫
我々の飛行機は、前日に出来した全日空のコンピュータートラブルの余波を受け、少々遅れ気味で、しかし無事に離陸。わずか一時間十五分のフライトで、一年でも一番美しい季節という、北海道新千歳空港に到着しました。
空港から道央道で一路札幌へ。まず旅行の始めに札幌の顕本願寺様を参拝。ご住職白部上人のご回向をいただき、今回の旅の無事を祈願。また、今は昔の北海道開教時代のこと、顕本寺開山時のお話をうかがいました。
そこから昼食をとる小樽へは高速道で。この地に来なければ味わえないと評判の新鮮さを期待しつつ、小樽の寿司処、北の「日本橋」へ。華・技・心の食事に満足いたしました。小樽は、商都として栄華を極めた明治・大正・昭和の面影を残す町並みや建物が多く、一行は自由解散で思い思いに、小樽運河、北一硝子と散策を楽しみました。私は、「にしんは魚に非ずしてお米なり」と言われたほどの、当時の勢いが想像できる贅を尽くして建設された、にしん御殿「旧青山邸」北の美術豪邸を見学。今なお輝き続ける職人技に感激致しました。
そして本日の宿泊地である定山渓グランドホテルへ。豊平川上流の渓谷地の緑豊かな山々に囲まれた温泉でゆっくり身体を癒したあと、本納寺・亮朝院・盛泰寺より参加の団参の全員が揃って大広間での宴会。本納寺総代高宮 正さんによる乾杯の音頭で開会。楽しく盛り上がりました。二次会はカラオケ、三次会では桐谷上人、松本上人を囲んでお酒を酌み交わし、和やかに話に花を咲かせました。
二日目はどちらかといえば移動日。長万部かに市場で昼食をとり、洞爺湖と、まだ白い湯気の上る昭和新山をぐるり回遊しながら南下。途中、洞爺湖を一望できる展望台で休憩のときには、丘の上に来年Gエイトのサミット会場に選ばれたウィンザーホテルも見えました。ついで、新日本三景の一つの大沼国立公園へ。凛々しくそびえ立つ駒ヶ岳をバックに大小八十一もの島があり、すばらしい景観と穏やかな湖畔を貸し切り遊覧船で島巡り。しばし時を忘れるくらいに自然の豊かさを満喫しました。
函館での宿泊地湯の川プリンスホテル渚亭は源泉100%の展望温泉露天風呂付き客室で、露天風呂から見える砂浜や目の前に広がる津軽海峡の雄大さは旅の醍醐味でした。夜は観光バスで、世界一ともいわれる函館山からの夜景鑑賞に出かけました。暗くて狭い山道を、バスの運転士さんは右へ左へ神業のごとくハンドルを回しながら標高334メートルの山頂へ。展望台からの眺めは幻想的な雰囲気、銀河のような輝きは美しすぎて、もしかして極楽はこのような所かなと忘れられない感動を胸に刻みました。
三日目の朝は早めにホテルを出て、ロマンかおる函館観光へ。まず朝市を散策しながらそれぞれ留守宅へのお土産を買いました。異国情緒漂う独特の町並み、海が見通せる特徴を持った素晴らしい幾筋もの坂道、その道沿いや坂の上には、お寺、正教会、カトリック教会、中華会館、領事館などが数多く点在し、古き良き時代がそのまま今も息づいていました。ガイドさんの説明を聞きながら、その辺はかなりゆっくりと歩いて散策。そして、幕末の函館戦争の舞台となった、男達の壮絶な闘いの地「五稜郭」。高さ107メートルのタワー展望台からの眺望は迫力満点で、千人以上の死者を出したとは思われないほど、現在は緑豊かに静かな公園でした。
最後に、見学は静かなトラピスチヌ修道院へ。日本最初の女子修道院で、現在七十名くらいの天使の聖母が日々聖務に励んでおられるそうです。説明を聞いていますと何か複雑に胸の詰まる思いで、日常にはない優しさを感じ、修道女さんが作られたお土産を買い足しました。
この時期、梅雨のない北海道は素晴らしい青空と風のない暖かな天候に恵まれ、ガイドさんの知識豊かな説明は旅を一層楽しくしてくれて、あっという間の三日間でした。皆さん、たくさんのお土産、楽しかった想いと感動と共に東京行きの飛行機に乗りました。羽田到着後にもANA乗務員さんのあるちょっとした心温まる好意が旅の楽しい思い出を増幅させました。
みなさん、いろいろお世話になりましてありがとうございました。
今年の団参にも楽しい<旅のしおり>をつくってくださった三井清二様、本寺報に紀行文をお寄せ下さった富田治夫様には、心より厚く御礼申し上げます。(住職)